まとめローンが総量規制対象外である理由について
複数の業者からの借入を一本化できるおまとめローンは総量規制の対象外です。これには改正貸金業法が大きくかかわっています。
そもそも総量規制とは何なのか、どういう法律なのか知っておくことはおまとめローンを選ぶ際にも参考になります。
総量規制って何?改正貸金業法について
総量規制は改正貸金業法に定められた規則です。まずは改正貸金業法が何を定めたものなのか知っておきましょう。
貸金業法は消費者金融業者やクレジットカード会社などの貸金業者に適用される法律で、2006年から順次改正されて2010年に完全施行されています。
ここで定められた大きなもののひとつが「総量規制」です。これは貸金業者の利用者にとっては重大な影響を与えました。それまでは、利用者の収入にかかわらず貸し出しされてきました。そのため年収に見合わない借入をする人が増えてしまい、「過剰融資による借金苦」として社会問題化していました。
総量規制はこういった借りすぎ・貸しすぎを防止するために改正貸金業法に盛り込まれました。この規制によって、年収に対して一定の割合以上の貸出、借入が禁止されることになりました。この一定の割合は内閣府が調査のうえで決定したもので、「利用者の年収の3分の1まで」とされています
たとえば年収が600万円の人は、借入総額は200万円までに抑えられ、それ以上の借入はできません。すでに総量規制の上限に達している人は、それ以上の額の借入契約を結ぶことはできません。
また、総量規制では借入限度額を算出するための「年収」が必要になります。そのため、計算の元になる収入そのものがないときには、借入ができなくなりました。これも改正貸金業法の大きなポイントのひとつです。
最も影響を受けたのが専業主婦の人たちです。それまでは働いていない主婦でも消費者金融業者から借入ができましたが、その借りすぎによる家庭不和といった問題が発生しており、それを防ごうという意図です。
主婦がパートなどで働くというとき、年間103万円という扶養控除のハードルがあります。これ以内に収めるように働いているという主婦は非常に多くいます。103万円の3分の1は約34万円です。パート主婦はこれ以上の借入はできません。
ただ、それではあまりに少なすぎるということで、配偶者の収入を加えた額の3分の1までとされています。この場合には配偶者の同意が必要となります。収入のない人は総量規制の計算の元となるものがゼロであるため、無職や失業中の人も借入はできません。
無職の人が働いていると嘘をつくこともあるため、職場への電話連絡による在籍確認が厳格に実施されるようになったのも、改正貸金業法によるものです。
おまとめローンにも大きく関わる問題ですが、改正された貸金業法では、申込時に年収の証明をすることとされています。申込者が申告した通りの収入があるかどうかを確認して、それを元に総量規制に抵触しない程度に貸出することが義務づけられています。
ただし、これは1社につき50万円以内または複数業者の合算で100万円以内の借入なら提示の義務はありません。この金額は、あくまで「申込者に提出を求めなくて良い」という扱いであり、総量規制の範囲内の申し込みであっても、業者が自己判断で申込者に収入証明書の提示を求めることがあります。
- 源泉徴収票
- 所得証明書
- 納税通知書
総量規制はクレジットカードのキャッシング枠も含むため、貸金業法が改正されたときに、クレジットカード会社から収入証明の提出依頼が届いたという人は多くいます。
給与所得者の場合には、収入は源泉徴収票によって簡単に証明することが可能です。業者や銀行によっては直近2ヶ月分の給与明細書でも通用します。
ただ、個人事業主の場合には源泉徴収票も給与明細書もありません。そのときには確定申告書などの書類を提出することになっています。これも改正貸金業法によって定められたものです。
ところが、確定申告書は作成の仕方次第では充分に収入の情報が盛り込まれないことがあります。確定申告書はあくまで事業から得られた収入を申告するものであって、その人自身にどの程度のお金が所得として入ってきたかは正確には分からないこともあります。
法律の許す範囲内でなるべく経費を計上することは自営業者なら誰でもやっていることでしょう。経費がかかったことにすると、その分だけ収入は圧縮されます。そういった場合には貸金業者は事業計画書や収支計画書などの提出を求めて良いことになっています。
そういった書類で本人の返済能力を証明する必要が出てくるケースは多くあります。たとえば起業して間もないときに、借入の申し込みをすると事業計画書の提出を求められることがあります。
また、おまとめローンは「自分が今抱えている借入を借り換えする」ことを目的としますが、これを適当な額で申告することはできません。消費者が金融機関を利用したとき、その情報はすべて個人信用情報機関に登録されます。
その情報を金融機関は申込時に閲覧して良いことになっています。これも、改正貸金業法によって定められました。総量規制は年収に対する一定の割合以上の貸出をしないことを定めたものです。
これは複数の貸金業者を利用していれば、その合計額になります。金融機関は、複数ある借入を個人信用情報機関からの情報から把握します。借入はすべて個人情報として登録されており、それを調査してうえで申込者が現在いくらの借金があるかを正確に知ることができます。
年収に対する借入の制限は、申込時には必ず正確な数値で知らされます。貸金業法における総量規制は非常に強い法律で、これを曖昧に運用すると厳しい処罰が待っています。
そのため、貸金業者では総量規制に抵触する貸出をしないよう充分に気をつけています。
もうひとつ、改正貸金業法において大きなポイントとして上限金利の設定があります。これは適正な金利で貸出をすることによって、利用者が返済に困らないように配慮したものです。
貸金業法が改正される前も、利息制限法によって金利の上限は定められていました。
借入額 | 上限金利(年率) |
---|---|
10万円未満 | 20.0% |
10万円以上100万円未満 | 18.0% |
100万円以上 | 15.0% |
ところが、消費者金融業者は改正貸金業法の前には利息制限法を超えた金利で貸出していました。これは違法ではなく、出資法という上限金利29.2%を根拠として貸していました。
10万円の上限金利である20.0%と出資法の29.2%の金利差を「グレーゾーン金利」と呼びます。改正貸金業法では、貸金業者の金利も利息制限法を守ることが義務付けられました。
改正貸金業法の目玉政策は、この「金利上限の設定」と「総量規制」です。目的は国民が業者からの借金によって生活を圧迫されないことです。
問題なのは、それでも借金が膨れ上がって生活苦になる人が存在することです。その救済措置のひとつが「おまとめローン」です。
貸金業法の改正のきっかけになったのは、借金による生活不安に陥る人が激増したことと、過渡の取り立てによって一家心中事件が相次いだことです。こうした社会情勢を受けて、過剰な借入を抑制するために改正されました。
貸金業法そのものは1983年に施行され、2003年と2006年に改正案が成立しました。主な内容はグレーゾーン金利の廃止と、闇金対策の強化、また貸金業界全体の適正化です。
グレーゾーン金利の撤廃によって多くの訴訟が発生しています。過度な金利によって取り立てられた払いすぎの利息を業者に請求して取り戻すという訴訟です。近年では少なくなりましたが、「過払い金請求」というのは、この訴訟のことを指します。
法律事務所によっては過払い金請求を専門とするところもあるくらいに、大きな動きを見せました。過払い金を払うために資産を使い果たして倒産してしまった業者も数多くあります。貸金業界の適正化では多くの規制や禁止事項が設けられました。
たとえば取り立てについて細かい禁止事項があり、違反すると厳しい罰則が課せられます。
「総量規制」はこの規制の一環です。そもそも貸金業法を改正したのは、返済が困難になるほどの借金を抱える多重債務者の増加が深刻な社会問題となっていたからです。そのため、総量規制も利用者の支払能力に応じた借入を推進するために設けられたものです。
総量規制対象外のローンには何がある?
銀行のローン・ショッピングは別
日本には数多くの種類のローンがあります。住宅ローンやマイカーローン、カードローン、おまとめローンなど枚挙にいとまがないほどのローン商品が提供されています。
ただ、そのすべてが総量規制の対象というわけではありません。同じようなローンでも、借入先や条件などによって総量規制の対象外となります。
対象外のローンとして代表的なのは銀行のローンです。銀行も消費者金融業者と同様のカードローンを提供していますが、適用される法律が違います。消費者金融業者には貸金業法が適用され、銀行には銀行法が適用されます。
銀行は貸金業者ではないので、貸金業法で規定された総量規制には関係ありません。三井住友銀行や三菱UFJ銀行、信用金庫、ろうきんなども同様で、総量規制対象外です。
また、クレジットカードについてはショッピング枠の利用は割賦販売法が適用されるため、これも総量規制対象外です。クレジットカードについて注意したいのは、キャッシング枠は貸金業法が適用されるという点です。
JCBカードや楽天カード、三井住友VISAカードなどショッピング目的で作ったカードに「おまけ」のようにキャッシング枠が付くことがありますが、これに適用されるのは貸金業法で、総量規制の対象となります。
おまとめローンの申し込みでは、この部分を対象とするかどうかが重要ですので注意しましょう。
借入残高ではなく限度額が大切
消費者金融業者やクレジットカードのキャッシング枠には貸金業法が適用されるため、総量規制の対象となります。それらの合計が年収の3分の1を超えてはならないとするのが、総量規制です。この「合計」は限度額も含まれますので注意しましょう。
貸金業法のうえでは、「借入を年収の3分の1とする」というのが規制の内容ですが、たとえば消費者金融で50万円の限度額のカードローンを2件契約していると、利用額がゼロであっても100万円使っているものとして計算します。
というのも、消費者金融のカードローンは限度額の範囲内でいつでも何度でもいくらでも借りることができるからです。今の利用額がゼロであっても、契約していれば限度額まで簡単にATMなどを使って出金可能です。
そのため、もし年収が300万円であったときにすでに50万円のローンの契約していれば、総量規制からすると残りは50万円で、それ以上の契約を貸金業者とかわすことはできません。
住宅ローン・マイカーローン・担保付きローン
総量規制対象外のローンとして覚えておきたいのは住宅ローンです。不動産の購入や不動産の改良のためのローンは総量規制とは関係ありません。いわゆるリフォームのためのローンは住宅の改良のためのローンですので、貸金業法とは無関係です。
また、自動車を購入するためのマイカーローンも総量規制の対象外ですし、担保付きローンも対象外です。担保付きローンでは、たとえば自宅などの不動産、株券などの有価証券を担保として借入します。
こういった担保を持っているということは、それだけの資産があるということですので年収に対する制限は緩和されます。おまとめローンを検討する際にも、担保ローンが使えないかどうかを考えてみる価値はあります。
担保があるローンは限度額は高めで金利が非常に低い設定になっているからです。返済ができなければ担保物件は売却されてしまいますが、かなりの好条件で契約できます。担保にできるものを所有している人は一考の価値があります。
おまとめローン
1.複数の借入の一本化
おまとめローンは複数の金融期間からの借入を一本化するローン商品で、銀行や消費者金融業者、信販会社、専門ローン会社などが提供しています。これは複数の借金によって生活が困難になってしまっている利用者の負担を軽減する目的で商品化されたものです。
はっきりと「多重債務者への救済」のためのサービスとして提供されているものです。
- 複数の業者から借入していて返済に困っている。
- 業者ごとに返済日が違うため、返済の管理が難しくなっている。
- 業者ごとに金利が違っているので返済の総額が分からなくなっている。
上記のような状態になったときに利用するというのが、おまとめローンの主旨です。
2.顧客に一方的に有利な借り換え
貸金業法の総量規制の対象外として規定されている「おまとめローン」は、法律上は「顧客に一方的に有利になる借り換え」とされるものです。これは借り換えする前よりも、借り換えした後のほうが利用者にとって返済しやすくなることを意味します。
たとえば毎月の返済額や返済総額を下げることや、金利を安く設定することが「おまとめローン」を提供する側の義務となっています。
おまとめローンは金融機関が自主的に提供している商品というより、総量規制によってこれ以上借りられなくなった人に対して、その例外として借り換え専用ローンを提供して生活の再建を図るために法律で定めたものという意味合いが強くあります。
3.例外貸付となる条件とは
おまとめローンは、顧客の利益の保護に支障を生じさせることのない貸付として、総量規制の「例外貸付」に分類されています。つまり、貸金業者からの借入であっても年収の3分の1以上の借入できるということです。
- 顧客に一方的に有利となる借り換え→これが一般的に「おまとめローン」と呼ばれるもの。
- 借入残高を段階的に減らすための借り換え
- 顧客やその親族などの緊急に必要と認められる医療費を支払うための資金の貸付
- 社会通念上、緊急に必要と認められる費用を支払うための資金の貸付(10万円以下で、3ヶ月以内の返済)
総量規制対象外のおまとめローンで負担を減らす
銀行のカードローン
銀行の個人向け融資として提供されているカードローンは目的を問わず借入できたため、総量規制対象外の借入をしたいときには銀行カードローンがベストな選択でした。
年収の3分の1以上どころか、年収ギリギリまで借入契約を結ぶことができたという報告も多数ありました。ところが、近年ではこういった貸付が「過剰融資」として問題視されており、銀行も自主規制として総量規制を採り入れ始めています。
過剰な融資として金融庁から指導されることを恐れて、多くの銀行カードローンが借り換えローンとしての活用ができなくなっています。
銀行の多くが個人向けカードローンの過剰融資を問題視されていますが、実際には審査を保証会社に丸投げしていた状態で自分たちで審査のノウハウを蓄積してこなかったことが要因とされています。
つまり金融庁から「自分たちで審査もせず、融資だけ次々にするのは社会的にどうなのか」と指弾されたと推測されています。一方で、自分たちで審査の態勢を整えて、独自の審査でおまとめローンを提供している銀行もまだまだ数多くあります。
代表的なのが「じぶん銀行」と「横浜銀行」です。この2行は、借入金の借り換えとして利用するローンを提供しています。
銀行 | 金利 | 最大融資限度額 |
---|---|---|
じぶん銀行 | 1.7%~12.5% | 800万円 |
横浜銀行 | 1.9%~14.6%円 | 1,000万 |
消費者金融業者のおまとめローン
銀行のローンに比較して金利面ではスペックは落ちますが、消費者金融のおまとめローンは総量規制対象外で利用可能で、返済に困ったときの救済手段として活用できます。利用でネックとなるのは金利で、おおよそ10%程度から15%くらいの金利で契約することが多くあります。
ただ、これは交渉の余地があり、申し込みのときに「金利が安ければ利用したい」と希望を伝えることで低い金利で利用できることがあります。
安心材料なのは「金利は現在利用中の状態よりも下がる」ことがほぼ確実である点です。これは貸金業法に基づいた借り換えであるため、「顧客に一方的に有利となる」条件を満たす必要があるからです。
顧客に有利な条件として最も分かりやすいのは金利です。そのため、確実に今よりも有利な条件で借り換えできます。審査も緩いとは言えませんが、銀行よりも通過できる期待が持てます。結果も早ければ申し込み当日に通知されます。
消費者金融業者 | 金利 | 最大融資限度額 |
---|---|---|
プロミス | 6.3%~17.8% | 300万円 |
アイフル | 3.0%~17.5% | 800万 |
アコム | 7.7%~18.0%円 | 300万 |
3社とも消費者金融業者としては大手で、利用者も多く安心して利用できます。返済は基本的に5年から7年程度を目安に設定されますが、毎月の返済が厳しいというときには最長で10年にも設定できます。
個人事業主が利用できるローン
自分で事業を行っている人だけが活用できるカードローンも総量規制対象外です。個人消費者向けのカードローンとまったく同様に限度額の範囲内で自由に借入ができます。
業者名・カード名 | 金利 | 限度額 |
---|---|---|
ビジネクスト | 3.1%~18.0% | 1,000万円 |
オリコ
「CREST for Biz」 |
6.0%~18.0% | 300万 |
オリックス
「オリックスVIPローンカードBUSINESS」 |
6.0%~17.8%円 | 500万 |
セゾン
カードローン(個人事業主専用) |
6.5%~17.8% | 500万 |
ビジネスパートナー
スモールビジネスローン |
9.98%~18.0%円 | 500万 |
名称はビジネスローンとなっていますが、資金使途は事業資金だけでなく通常のカードのように生活費や娯楽費用などに使うことができます。
まとめ
おまとめローンは、総量規制と「表と裏」の関係にあります。
収入によって借入の上限を定めるとともに、それ以上に借りてしまった人を救済するために「顧客に一方的に有利となる借り換え」を法律として設けたという経緯があります。